おざっちの笛吹き日記

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2009年 07月 10日 ( 1 )

哀悼

俳優の勝野洋さんとキャシー中島さんの長女が、肺ガンで亡くなったと朝の番組でやっていた。29歳の若さだったそうである。なんでこんなことを書くのかというと、ボクは勝野さんを「おんぶ」したことがあるのだ。


あれはもう今から20年以上前のことだが、今でもやっている、「ファイトー!イッパーツ!」のリポビタンDのテレビコマーシャルに、スタントマンで出てくれないか、との話が舞い込んできたのだ。その頃ボクはカヌーに夢中で、あちこちの川を下ったり、スラロームの大会に出ていたのだが、そんな中の一人の仲間から話しが来た。二日間拘束されるのだが、ギャラのよさに惹かれてOKしてしまった。
コマーシャルは夏に向けて流されるものだが、撮影はまだ寒い早春に行われた。


京都の保津川遊船は亀岡からスタートしているが、我々もそこから撮影の為にチャーターされた2杯の遊船と共にカヌーでスタートした。そして撮影現場の「小鮎の滝」というポイントに到着し、しばらく待っていると、上の方の道に、勝野さんと渡辺裕之さんの乗った車が到着し、やがて河原に降りてきた。ボクともう一人のスタントマンになる仲間は、さっそく彼らと同じ服(寒いのに半袖)を着せられ、撮影に取りかかった。撮影は二人乗りのカナディアンカヌーに乗って激流を下る、というもので、勝野さんをバウ(前部)に乗せ、ボクは渡辺役になってスターン(後部)でコントロールするというもの。「小鮎の滝」は保津川の中で一番落差のある瀬で、下る途中、ボクはえらく緊張したことを思い出す。もしひっくり返ってなにかあれば大変である。しかも顔がはっきり見えないように、勝野さんの後に隠れるようにして漕がなければならない。


「カーット!」と監督の声が飛ぶ。なんと雪が降ってきたのである。それくらい寒い日であったが、なんせ夏のシーンなので、太陽がギラギラ感を演出せねばならない。その為に岩壁には銀色のレフ板(反射板)がズラリと並べられ、おまけに激流を演出するために、ホースで水をぶっかけるのだ。ただでさえすごい激流が、さらにすごいことになっている。
で、無事下り終えると、「もう一度」と言われる。もちろん何度も下ることは予想していたのだが、なんとマネージャーの要望で、タレントの二人の足下を濡らさないよう、ボクらに「おんぶ」して上流のスタート地点に上がるよう言われた。今考えるとなんだか解せない話なのだが、ギャラに目がくらんだ二人は、おんぶも辞さないのであった。そしてボクは勝野さんを背に、足場の悪い岩場を上流へ向かった。ズシッとボクより重たい体重が背中にかかるのだが、「スターをおんぶしている」という緊張感というか、優越感(?)が勝っていたようで、さして苦にならずに歩いたような気がする。


何度か瀬をくだり、ようやくその日は終わりを迎えた。バスのところまで上がる途中、二人は持っていたパドルでチャンバラのまねごとをしたのだが、その立ち回りが見事だったことが印象に残っている。


そして翌日は場所を瀬田川に移して撮影された。道の上から川下りする二人を俯瞰したシーンを撮るのだが、すでに二人は東京に帰っており、相棒と川を下ることになった。カヌーの舳先には大きなカメラを据え付け、一番きつい瀬に突っ込めと言う。そこは大きなストッパーになっており、ラフトはともかく、カヌーだと巻かれそうなポイントである。しかしギャラのために突っ込んでいく二人。ボクは一瞬目をつぶって漕いだ。ビデオカメラは一千万円以上すると聞いていたので、勝野さんを前に乗せているより緊張した。しかしすんなりと通過し、撮影は無事終了した。ご褒美のギャラは二日間で3万円ほどいただいたと記憶している。


一ヶ月ほどが経過し、コマーシャルが流された時には感激した。って、ボクの顔はまったく写っていなくて、勝野さんの後を漕ぐのは、確かに渡辺さんに見えた。


葬儀で肩を落とし、涙ぐむ勝野さんを見ていると、あの時ボクの肩にズシッと体重を乗せた彼を思い出し、なんとも言えない気持ちになったのであった。
合掌
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by ozawa-sh | 2009-07-10 22:29 | Comments(3)

フルート大好き!そのために感性を磨き、体力をアップし、日々努力。そんな毎日を書き綴っていきます。


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