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おざっちの笛吹き日記

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昔の話

野洲市長に山仲善彰氏が当選。なんと、氏とはこんな思い出が、、。


午前6時、20杯ほどのシーカヤックは、上対馬町の鰐浦(わにうら)漁港を出発、2艘の漁船に先導されながら、一路韓国の釜山を目指した。梅雨明け間近の6月下旬、我々は激しい雨に叩かれるテントの下で出国手続きを終え、パスポートと旅の装備を漁船に預けた。漁港の防波堤を通過した途端、もう引き返すことはできないと覚悟した。今はただ梅雨空にひとつ灯る船のランプに導かれ、ひたすら釜山へと漕ぎ続けるしかない。


1時間が経過したが、対馬の島影はまだくっきりと横に見えている。対馬と釜山との距離は直線で50キロほど。空気の澄んだ日には韓国が見えるほどの距離だが、カヤックで渡る異国の地は遠い。おまけに、対馬海流の流れをフェリーグライドするように漕げば、60キロになるという。琵琶湖縦断の方が距離的には長い。しかしこの海峡のフネの下は「板子一枚下は地獄」の言葉どおり、何千メートルもの暗闇が広がっている。それを思っただけで、体がすくむ。


1時間に5分ほどの休憩。皆のパドルが止まる。すると静止しているハズの各艇は、バラバラになってしまう。海流のせいだ。「山仲さん、オシッコするので、しばらくお願いします」、、なにをお願いするのかよく分からないが、とにかくカヤックに座った姿勢で用を足すためには集中力がいる。ボクと山仲さんはタンデム艇のクルーを組んでいた。ボクが前(バウ)、氏は後(スターン)を漕ぐ。


終始大きなウネリがやってくる。カヤックの前が沈み、持ち上げられる。「順調に釜山に向けて進んでいます!現在ちょうど海峡の真ん中です。皆さんがんばってください!」とGPSを積んだ漁船から告げられる。二人でピッチを合わせひたすら漕ぐ。と、突然霧の中から、真っ黒なタンカーが現れ、海面近くから見上げるその大きさに驚く。まさしくこの海峡は海の道なのである。


遠くにうっすらと陸地の影が見えてきた。朝鮮半島である。「ヤッター!」と喜んだが、ここからが遠かった。進むにつれ、やがて白い建物が見え、車の走っている様子が見え、岩壁で釣りをする人影までが見えてきた。胸に熱いものがこみ上げてくる。そしてついに、釜山港に入港。最後は法律上カヤックを漁船に積み替えて上陸した。クルーの山仲さんと固い握手。
約8時間ほどの海の旅がようやく終わった瞬間だった。10年以上前の話である。


写真/釜山港にて。左の赤いカヤック。前がボク、後が山仲さん。野洲はあんたにまかせたで!
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by ozawa-sh | 2008-10-15 21:23