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おざっちの笛吹き日記

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卑弥呼幻視行

秋晴れの一日。無性に行きたくなった奈良「山辺の道」。おとぎ話のような風景があちこちにちりばめられた素敵な道。心の癒しを求めて走ってきた。


加茂を経由して車を走らせる。小1時間でいつもの駐車場に到着。さっそくMTBを降ろし準備する。空は快晴。気温が上がってきたが、風が涼しくて気持いい。これから始まる古道ツーリングに胸が高鳴る。今日はまったくのソロ。マイペースで好きなように走ろう。まずは奈良市内へ。東大寺の裏道を抜け、白毫寺へと走る。
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入り組んだ町並みがなんとも心に浸みる。このあたりからが「北山辺の道」である。お寺の裏からいきなり山道に入る。距離は短いがまずはオフロードの楽しみを味わわせてくれる。広い車道を横切り田んぼの中を走る。ヒガンバナがボクを見上げて咲いている。今年は夏が長かったので、花の色がなんとなく冴えないと思っていたが、なんのなんの例年どおりの鮮やかな赤だ。自然は約束を守る。
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「右こくぞう」の石標を右へ降りていくと、「こくぞう」こと「弘仁寺」だ。左方面へ行けば伊勢道方面へと至る。
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山門でMTBを降り、国宝の本殿前を押していく。平日のせいか人っ子一人いないシーンとした午前である。「白川ダム」で少し早い昼食とし、日陰のベンチに寝ころんでしばし昼寝タイム。手入れされた美しい竹林を抜け、しばらく行くと天理の町が見えてくる。大きな宿坊があちこちに建っている。
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石畳を上がっていくと、ここから「南山辺の道」の起点となる石上(いそのかみ)神宮だ。そっと境内を抜け、標識をたどるようにして古道を行く。
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↑時にはこんなところもトレールとなっている。


山辺の道トレールセンターで少し休憩し、再び南下する。すぐに大王たちの古墳が連続するエリアに入る。
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このあたりから中高年のハイカーが多くなってくる。まずは「景行天皇陵」、次が「垂仁天皇陵」と続く。この丘陵からは遠く「大和三山」を望むことができる。「大和青垣」の地である。アップダウンを繰り返し、やがて大神(おおみわ)神社の境内へと入ってくる。ここが折り返し地点となる。今回はいつも立ち寄る三輪素麺のお店「森正」をパスする。


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「上つ道」へ入り、奈良へと一直線に戻る。途中「箸墓」の横を通り、今回の目的地「纒向(まきむく)遺跡」へ立ち寄ることにした。卑弥呼の宮殿にほぼ間違いないとされた遺跡だ。桜井線の小さな踏切を渡ると、その遺跡はすぐに見つかった。
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遺構が見つかった時には古代史ファンが大勢つめかけたのだが、入ってみると関係者だけが作業をしていた。なにやら重機が遺跡らしき穴を埋めているところだった。ボクがMTBで近寄っていくと、ひとりの若い女性がこちらを振り向いた。
「遺跡の見学ですか? 残念ながらちょうど調査と一般公開が終わり、この土地の持ち主に返すために、元通りにしているところなんです。」
ボクは彼女の顔をマジマジと見てしまった。帽子をかぶり、首にタオルを巻き、作業着には泥が付いているのだが、なんという美しい人だろう。きっと考古学の関係者なんだろうが、黒々とした瞳がしっとりと形の良い眉の下で光り、小さめの唇の向こうには、真っ白な歯が覗いている。
「卑弥呼に会えた」と思った。まさに1700年前の女王が、今ボクの目の前に現れたのだ。この纒向の地で。
「あ、あの、、そうなんですか。残念です。」
「良かったら、あのテントのところに資料が積んでありますので、お読みください」
ボクはこれ以上彼女の前に立っていることができず、その資料を取り、まだ少し残っている発掘跡を見ていた。
「ありがとうございました!」と言うと、彼女は丁寧にお辞儀をした。


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上つ道の由来はよく分かっていない。「中つ道」「下つ道」の合わせて3本の古道が、平城京へ通じていたらしいが、残っているのはこの上つ道だけである。走っていると、実に様々な祠や鳥居や寺、石標、古墳などに遭遇し、飽きることがない。なかには「どうしてこうなったの!?」というような祠が祀られている。
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↑上の写真では少し分かりにくいが、祠の下を水路が通り、半分は水の上なんである。
さて、纒向遺跡と並び、今回のもうひとつの目的は、「黒塚古墳」である。周辺が公園に整備され趣こそないが、古墳本来の形がよく分かる。ここからはおびただしい数の鏡が発見され、話題になった。ボクは古墳に作られた周回路をグルッと回り、円墳の頂上に登ってみた。周辺は奈良の古い町並みの屋根が見下ろせ、ゆっくりしたいところだった。
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↑セルフタイマーでパチリ。


さらに奈良市街へと走る。ほぼ直線の古道は最後に観光客で賑わう「奈良町」を抜け、「猿沢の池」を回り込むようにして県庁に出てくる。
透明な秋の一日、本当にボクは卑弥呼に会ったのだろうか?
by ozawa-sh | 2010-10-06 22:17