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おざっちの笛吹き日記

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由布岳登山

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小説家であり、登山家でもある深田久弥が選んだ「日本百名山」というものがあるのだが、後年、「なぜこの山を選ばなかったのだろう」と後悔したと伝えられる、「由布岳(1583.5m)」。この山は「豊後富士」とも呼ばれ、美しい山容は、登りたくなる気持ちを起こさせるに十分だ。実はボクも昨年の夏に大分を旅行した時、別府から湯布院へ抜ける車窓からこの山を仰ぎ見ながら、「いつか登ってみたい!」と強くあこがれたのであった。
しかしそんな思いが、これほど早く実現するとは思いもよらなかった。
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「なあなあ、こないだ九州へ行ったんやけど、途中で見た由布岳ちゅうのがすごくキレイな山でなあ、、、」
ウチの会社に出入りしている、いつもの山仲間Kさんに、ふとこんなことをもらしたのだが、これがもう一人の山仲間であるYさんの耳に入り、数日後、アッと言う間に企画書となって目の前に現れたのにはビックリした。ボクのあこがれが、たちまち現実となりそうだった。

そんな経緯で、10月28日にいよいよ由布岳へ出発となった。大分までは往復をフェリーとしたのだが、大阪~別府を結ぶサンフラワーには「弾丸フェリー 往復一万円!」という切符があり、これを利用して安く行くのだ。しかし往復とも夜中に航行するというのは、年寄りにはかなりつらいと思った。しかも最終日は他の3人と違って、ボクだけフェリー乗り場から出勤なのである(涙)。
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まあなにはともあれ、八条口を出発したバスは大阪南港フェリー乗り場へ到着。手続きをして乗船した。サンフラワーはでかいフェリーで、何台ものトラックや乗用車を飲み込んでいく。我々は少しグレードアップし、両サイドが棚になったベッドの部屋。窓はなく海は見えない。風呂に入り、レストランでビールで乾杯!いよいよこれからオジサン4人組の突撃登山の開始である。
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船のエンジンの下から突き上げるような振動で、あまり眠れなかったが、おかげでオジサンのイビキがかき消されてよかった(笑)。船内の照明が明るくなり、瀬戸内海を抜けたフェリーは別府港に到着した。早速、港でレンタカーを借りた。しかし借りたフィッツにはナビが搭載されておらず、地図と4人の勘で道をたどっていくことにした。といっても由布岳までは簡単なルートなので、問題なく行くことができた。途中「鉄輪(かんなわ)温泉」のあたりからは相変わらず盛んに湯煙が上がっていた。
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車から降り、登山の用意をする。目の前には由布岳がドドド~ンと、圧倒的な姿を見せてそびえ立っていた。天気は快晴。山頂に少し雲。「さー由布岳、登ってやるから待ってろよ~!」と気勢を上げる。
登山口からしばらくは緩やかな草原を歩く。ススキの穂が揺れる快適なアプローチ。ところどころに大きな岩が転がっているのは、昔この山が噴火した名残か。
しばらく歩くと、紅葉の始まった森の中に入った。木漏れ日が射す実にすばらしい森。これが照葉樹林というものか。道の傾斜も緩く、どんどん距離をかせぐ。しかし外観どおり、この山はこのままでは済まない。最後が岩場のきつい登りとなっている。
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約2時間後、最後の岩場を抜けて頂上に立った。やや雲が多くなってきたが、その切れ目からは別府湾がのぞいていた。周囲360度の大パノラマがすばらしい。天気が良ければ四国も見えるらしい。少し早かったけど、ここで昼食とした。平日にもかかわらず登山者の姿が絶えないことが、この山の魅力を物語っている。
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西峰(主峰)にも登ろう、ということになった。実は事前にユーチューブでルートを確認してあったのだが、鎖場を含むこのコースは、かなり危険度が高いように思えた。慣れないせいか、ボクはどうもこういうところが苦手なのだ。鎖をたよりに、ほんの少しの足場を探りながら横に移動するシーンが目に浮かぶ。
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さあ、いよいよ西峰へアタックだ。黄色いペンキでルートが指示してあり、その通り登って行く。今まで持っていたストックは役に立たず、手足の支持だけが頼り。下を見れば、その高度差にクラクラする。そしてあの鎖場にやってきた。岩肌にへばりつき、カニのように横向きに移動していく。鎖もつかんでいるが、やはり岩の凹凸を足がかりにする方が確かだ。途中でKさんは足を攣り、そこでリタイア。
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やがてこの難所を過ぎ、頂上に立つ。眼下にはこの山が噴火したことを示す火口がポッカリと口を開けており、富士山のように周囲をお鉢巡りすることもできるようだ。しかし我々は登ってきた岩場を再び降りていく。カニの横這いも無事通過した。
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紅葉樹林帯を下っていく。斜めに射す日に、赤黄の色がさらに美しく映える。頂上を極め、そんな中を歩く気分は最高だ。やがて草原まで降り遠くに見えていた登山口が近づいてくる。
全員無事に下山。振り返れば、さらに崇高な姿に思える由布岳の姿。すばらしかった山行をしみじみと心に焼き付けた。

湯布院温泉へと行く。たくさんの温泉があるのだが、前回ボクが入った露天風呂へ行った。湯船に浸かりながら、「あの山頂にいたんやで~!」と眺めるのは気分が良かった。
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別府に引き返し、美味しいラーメンをすすった。もちろんビールで乾杯(ドライバーはアルコールゼロでね)。その後レンタカーを返し、フェリーに乗り込んだ。大阪への帰途はやはりエンジンの振動であまり眠れなかったが、由布岳の美しい姿を思い浮かべながらうつらうつらとしていた。
明け方、船は大阪港に入り、デッキから眺める朝日が海面にキラキラと美しかった。
by ozawa-sh | 2012-10-30 20:48